不動産は購入する時と同様に、売却する時にもさまざまな税金が課せられます。
人生で最も大きな買い物であるマイホームの購入ですが、その不動産にずっと住み続けられる保証はありません。
ローンの返済が困難、多額の資金が必要、生活の変化、さらに良い家に引っ越すため、転勤など、さまざまな理由や環境の変化により、所有している不動産を売却する場面は訪れます。
不動産は購入時に多額のお金が動きますが、それは売却時も同じです。
そのため、売却額が数千万円台になることも珍しくない不動産売却では、支払わなければいけない税金も高額です。
不動産を売却して手に入れたお金はすべて収入になるわけではありません。
事前に売却時に支払う必要がある税金の種類や特例などを知っていなければ、大きな損をする可能性があります。
不動産の売却を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
目次
不動産を売却した時にかかる税金
自分が所有する不動産が2,000万円で売却できたからといって、そのまま丸々2,000万円が自分の収入になり手元に残るわけではありません。
不動産売却時にかかる税金は、『利益が発生した時に支払う税金』と『利益が発生しなくても支払う税金』に分類されます。
以下の項目でそれぞれ詳しく解説していきます。
利益が発生した時に支払う譲渡所得税
3,000万円で購入した不動産が4,000万円で売却できた場合、利益は1,000万円になります。
不動産の売買で儲けようと考えているいないは置いておいて、どちらにせよこのケースでは売主は不動産の売却で1,000万円の利益を計上したことになります。
本項で説明する利益に対してかかる税金とは、売買により利益になった1,000万円の部分に課せられる税金です。
不動産売却時に発生した利益に対してかかる税金は、譲渡所得税と呼びます。
これは、土地や建物などを売却して得た利益に対してかかる所得税と住民税の総称で、前述したように不動産を売却した時に得た利益に対してのみ課せられます。
考え方はシンプルで、不動産を売却した時に利益が発生すれば支払う必要があり、発生しなければ支払う必要がありません。
不動産を売却する時にかかる税金で最も高額なのが譲渡所得税であるということは必ず覚えておきましょう。
取得費の算出方法
譲渡所得税は『譲渡所得』に対して税率をかけて算出するため、事前に支払うべき税金を把握するためには譲渡所得を正確に計算する必要があります。譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
譲渡価額は不動産を売却した金額のことです。
取得費とは不動産を購入する時に使用した金額のことで、物件の代金だけでなく購入時の税金や不動産会社へ支払った仲介手数料、建築代金や改築費などが含まれます。
譲渡費用は売却時に使用した金額のことで、仲介手数料や違約金などが含まれます。
たとえば、取得費が3,100万円で譲渡費用が50万円だったとしましょう。その場合、譲渡価額4,000万円からこれらを差し引いた850万円に対して譲渡所得税が課せられるということになります。
税率が所有期間で変わる
譲渡所得税は、その不動産を所有して5年を超えているかどうかで税率が変わります。
- 短期譲渡所得(5年以内)の場合⇒所得税30%+住民税9%=39%
- 長期譲渡所得(5年以上)の場合⇒所得税15%+住民税5%=20%
このように、譲渡所得税は不動産を売却した年の1月1日時点で所有してから5年を経過しているかどうかで大きく税率が変わります。つまり、4年目で売却を検討している方は、もう少し待って5年目に売却した方が税金は安く抑えることができます。
上記例で用いた850万円の所得額で税金を計算すると、短期譲渡所得で約331万円、長期譲渡所得で約170万円の税金を支払う必要があります。
さらに、2037年12月31日までは所得税部分に2.1%の復興特別所得税がかかるため、上記例で出した額よりも多くの譲渡所得税を支払う必要があります。
利益が発生しなくても支払う税金
不動産売却時に発生する税金には、売却益が発生してもしていなくても関係なく支払うべき税金があります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
不動産売買のような多額のお金が動く取引の場合、契約書の有効性を担保するために印紙を添付した契約書を作成する必要があります。
その印紙を入手する際に必要な印紙税は、契約書に記載されている取引金額に応じて価格が変わります。
契約金額 | 税率 |
1,000~5,000万円 | 2万円 |
5,000~1億円 | 6万円 |
1~5億円 | 10万円 |
5~10億円 | 20万円 |
10~50億円 | 40万円 |
50億円~ | 50万円 |
他にも、不動産登記の名義を変更するための登記をしてもらう司法書士への報酬や、不動産会社への仲介手数料などには消費税が課税されます。
これらの税金は譲渡所得税と比較すれば少額ですが、利益の有無に関わらず発生するものなので必ず把握しておきましょう。
不動産売却時にかかる譲渡所得税の特例
不動産売却時には、譲渡所得税、印紙税、登録免許税、消費税などの税金が課せられますが、そのなかでもとくに高額な支払いが必要になるのが譲渡所得税です。
売却して利益が出てもたくさん課税されたら意味がない…そんな風に落ち込んでいる方もいるかもしれませんが、この譲渡所得税にはさまざまな特例が用意されているため、要件を満たすことができれば特別な控除を受けることができます。
ここからは、譲渡所得税の特例を受けるための利用方法を詳しく紹介します。
3000万円の特別控除
前述したように不動産売却では、発生した利益(譲渡所得)に対して税金が課せられます。
しかし要件を満たすことで、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最大で3000万円の控除ができる特例があります。
つまり、不動産を売却した後の譲渡所得額が3000万円を超えなければ、譲渡所得税は発生しないということです。
上記で数字を出して説明した、譲渡価額4000万円で譲渡所得が850万円のケースでは、3000万円の特別控除を適用すれば税金を支払う必要がありません。
自分が住んでいる地域が爆発的に地価が上昇していれば話は別ですが、多くの不動産は購入時よりも3000万円も高く売却できることは稀です。
そのため、多くの方はこの3000万円の特別控除を利用することで、不動産売却時の譲渡所得税の支払いを免除できるのです。
要件
3000万円の特別控除は誰でも利用できるわけではありません。
特例を適用するためには、以下の要件に該当している必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売ること
- 売却した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていない
- 売主と買主が親子や夫婦などの特別な関係ではないこと
- 災害により滅失した家屋の場合は住まなくなってから3年を経過する日までに売ること
自分が住んでいる不動産を家族などの親しい人以外に売れば、特段難しい要件はありません。
また、この特例を受けることだけを目的に入居した家屋であると判断された場合も、特例を適用することはできません。
あくまでも、住居として自分達が暮らしていた不動産を売却する時にだけ利用できる特例ということです。
上記要件は一部をわかりやすく抜粋したものなので、詳しく知りたいという方は国税庁の「マイホームを売った時の特例」をご覧ください。
申請方法
3000万円の特別控除は不動産売却により利益が発生した多くの方が利用できますが、適用するためには売却した翌年に税務署への申告が必要です。
その際に用意しなければいけない書類は以下の通りです。
- 確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書
- 仲介手数料の領収書
税務署へ証明しなければいけないのは譲渡所得額なので、譲渡価額・譲渡費用・取得費を証明できる書類を用意する必要があります。確定申告の提出は原則毎年2月16日から3月15日なので、不動産を売却した翌年は忘れずに手続きを行いましょう。
その他の特別控除
不動産売却時に適用できる代表的な特例は上記の「3000万円特別控除」ですが、それ以外にも譲渡所得を控除できるさまざまな特例が用意されています。
- 公共事業などのために土地や建物を売却した場合は5000万円
- 特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合は2000万円
- 特定住宅地造成事業などのために土地を土地を売却した場合は1500万円
- 平成21年および平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合は1000万円
- 農地保有の合理化などのために土地を売却した場合は800万円
上記で紹介した特別控除はそれぞれ併用できますが、最大で5000万円が限度となります。
さらに、10年以上所有していた土地と建物を売却した場合は、税率が軽減されるという特例も用意されています。
この『10年超所有の軽減税率』は3000万円特別控除とも併用できるため、大幅な節税を実現できます。
上記で紹介した3000万円の特別控除も同様ですが、これらの特例を利用するためには確定申告が不可欠です。
たとえ利益が出ていなくても確定申告はしなければいけませんので、自分が売却した不動産が利用できる特例を調べたうえで適用してください。
まとめ
不動産を売却した時にかかる税金の種類と譲渡所得税の特例をわかりやすく説明してきましたが、参考になりましたか?
譲渡所得税は不動産を売却した時に発生した利益に対してかかる税金で、それ以外にも印紙税・登録免許税・消費税が課税されます。
しかし、この譲渡所得税は上記で紹介した特別控除を適用すれば大幅な控除を受けられるので、多くの場合支払う税金を0円にすることも可能です。
とくに、3000万円の特別控除は難しい要件もありませんので、不動産売却時で利益が発生して譲渡所得税を支払わなければいけない状況になった時は、必ず確定申告を行い適用しましょう。
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